臨床病理科について

 臨床病理科では採血、血液・生化学・免疫・細菌検査・輸血検査・病理・細胞検査、生理機能検査を行っています。早期診断・治療に役立つよう、「正確で早く」をモットーに検査結果等の情報を提供しています。

 検体検査室ではある一定の時間帯に検体検査が集中しないよう時間差出勤を行い、外来診療が始まる前の時間帯に入院患者様の検体検査を、続いて8:00からの外来患者様の検査は、何度も足を運ぶことなく当日に説明が受けられるよう、特殊な検査以外は1時間以内の結果報告を心がけております。そのため検査に使用する自動分析機は中型の装置を主体に、小回りの利く装置で対応しています。病理・細菌検査、システム管理なども同じスタッフが担当し、コンパクトで機能的な検査室となっております。

 生理機能検査室では心電図・超音波検査を中心に、脳波などの神経検査、呼吸機能検査、24時間心電図解析や睡眠時呼吸解析、持続血糖測定検査など、多領域の検査・解析業務を行っています。長い待ち時間が生じないよう、効率的なスタッフの配置を可能にすべく検体検査室との掛け持ち制を採用しています。

 多くのスタッフが検体検査・生理機能検査に関わることで、適切な業務、効率的なスキルアップ・人材育成の方法を自ら考える検査室を、またスタッフ間の目標を共有し、知恵を出し合いながら、積極的に学会発表や認定資格の取得を行い、質の向上を追求する検査室を目指しています。日進月歩の医療の中で、常に質の向上を目指し、地域医療に貢献できるよう取り組んで参ります。

臨床病理科検査一覧
血液一般検査

 血液一般検査は、貧血などを調べる全血球計算・凝固機能・骨髄・鼻汁好酸球検査などの検査を行っています。全血球計算は、自動血液分析装置を用い、赤血球数、白血球数、ヘマトクリット値、ヘモグロビン量、網状赤血球数、血小板数、白血球分類などを検査します。技師は自動分析機から出された結果を判定し、異常値の場合や血液疾患が推定される場合は顕微鏡でさらに精査をします。

 赤血球は全身に酸素を運び二酸化炭素を持ち去ります。血液中の赤血球の体積のことをヘマトクリット値と言い、赤い色の事をヘモグロビン(血色素)と言います。このような項目で貧血の状態を測定しています。白血球には感染、免疫、アレルギーに関係する細胞があり、数や白血球形態を調べることで診断が確定することもあります。

 一般検査は尿・便・体腔液(胸水、腹水、髄液など)を検体として扱っています。尿検査は色々な成分(タンパク・糖・ウロビリノーゲン・ケトン体・潜血など)を調べる定性検査、細胞や細菌・結晶などの有形成分を自動分析機・顕微鏡で測定しています。体腔液検査も同様にタンパクや細胞成分などを調べます。便からは消化管からの出血の有無や寄生虫、寄生虫卵の有無を調べます。

輸血検査

 手術前や交通事故の出血時などで、輸血しなければならない場合、輸血製剤が患者様に適合するかどうかを調べ安全に輸血できるようにします。主にABO、Rh血液型、交差適合試験、不規則抗体検査などを行っております。待機手術はタイプ&スクリーニング法を適応し、安全な輸血検査・適切な輸血製剤の使用を心がけています。血液製剤は検体検査室で一元管理されており、自己血の保管や血液センターへの発注、副作用や輸血後検査の管理・他施設への出庫も大切な仕事のひとつです。

生化学検査

 体の栄養状態を診るタンパクやアルブミン、糖尿病の検査では、血糖やヘモグロビンA1c、肝機能検査ではAST(GOT)・ALT(GPT)・γ-GTPなど、腎機能検査では尿素窒素・クレアチニン・尿酸など、高脂血症の検査では、総コレステロール・中性脂肪などを測定しており、その他電解質(ミネラル成分等のバランスを見る)や血液ガスを調べる検査などを行っております。免疫血清検査では、HBs抗原(B型肝炎ウィルス)やHCV抗体(C型肝炎ウィルス)などのウイルス感染症の検査や、CEA・AFP・CA19-9などの腫瘍マーカー、その他甲状腺ホルモンやフェリチン、インスリン等の検査を行っております。
 また迅速キットを用いて、インフルエンザ抗原、アデノウイルス抗原、RSウイルス抗原、マイコプラズマ抗原・抗体などの感染症検査も行っております。

生理機能検査室

 生理機能検査室では、4~7名の臨床検査技師が心電図(安静12誘導・ホルター・負荷)・超音波検査(心臓・腹部・末梢血管・表在臓器)・呼吸機能・脳波・血圧脈波検査を中心に、診療・人間ドックからの依頼に対応しています。フロア内はシールドルーム1室と検査ブース5室を効率よく使用しながら、その日その時の依頼件数に合わせた人員配置を行う効率的な運用で対応し、待ち時間の短縮を心がけています。

 心電図・超音波検査・血圧脈波検査は一つのベッド上で検査ができる体制をとっています。

1.安静12誘導心電図
 両手首、足首、胸に電極をつけ、心臓の電気活動を体表面から記録する検査です。不整脈、心肥大、狭心症、心筋症などの診断・治療効果・経過観察に用いられています。検査時間は数分です。
2.マスター負荷心電図
 2段階段を上り下りして、心臓に負担をかけて心電図に変化がないかを調べます。狭心症の診断や不整脈の重症度評価に用いています。検査時間は約15分です。心エコー図検査とセットで行うことが多く、成人の場合は、安静時に冠動脈狭窄がないか調べ、負荷前のリスク把握に努めています。
3.トレッドミル負荷心電図
 心電図と血圧計を付けた状態で、ベルトコンベアの上を歩き、心臓に負荷をかけて心電図の変化がないかを調べます。狭心症の診断や不整脈の重症度評価、運動耐応能などを調べます。検査時間は約20~30分です。
4.ホルター心電図(24時間心電図)
 シールタイプの心電図電極を胸に付け、24時間心電図を記録します。狭心症の診断や不整脈の重症度評価に用いられています。入浴できないこと以外は普段通りの生活をして頂き、行動記録を付けて頂きます。行動と心電図変化の関連も調べます。
5.呼吸機能検査
 マウスピースをくわえ、鼻栓をして口呼吸をして頂き、肺活量を調べます。肺疾患の重症度や手術前の肺機能を確認するために行います。検査時間は約10分です。
6.超音波検査

 目的部位にゼリーをぬり、探触子(プローブ)を用いて検査を行います。 検査時間は目的部位、疾患の有無・重症度で異なり、10~30分前後の時間を要します。

腹部超音波検査:肝臓、胆嚢、膵臓などの臓器の形態や腫瘍の有無などを調べます。
心臓超音波検査:心臓の大きさや動き、弁の状態など、心臓の機能を調べる検査です。また、冠動脈狭窄の有無、頚動脈や下肢動静脈を同時評価し、心疾患の関わり、診断を行っています。
頚動脈超音波検査:頚動脈の状態から全身の動脈硬化を推測や脳梗塞のリスク評価を行います。
下肢動脈超音波検査:下肢の動脈に狭窄や閉塞の有無を調べます。
下肢静脈超音波検査:下肢の静脈の血栓の有無や静脈瘤の評価を行います。
表在超音波検査:甲状腺の大きさや腫瘍の有無・種類、その他目的部位に異常所見がないかどうかを調べます。

7.脳波検査
 頭皮に電極をつけて脳の電気活動を波形として記録します。てんかんの有無や脳の機能評価に用いています。検査時間は約40分です。
8.聴性脳幹反応
 頭部と両耳に電極をつけ、ヘッドホンを装着し、音刺激を行い聴覚路の反応を記録します。聴力の確認のために検査を行います。検査時間は約1時間です。
9.血圧脈波検査(ABI/PWV)
 専用機器を用い足首上腕血圧比(ABI)と脈波伝播速度(PWV)を同時に記録します。検査時間は約5分です。
10.睡眠時呼吸解析検査
 簡易機器・精密機器を用いて睡眠時の無呼吸の有無・種類・血中酸素濃度を調べ、重症度を評価します。
11. 24時間血圧検査
 携帯型自動血圧計を用いて24時間の血圧を記録します。
12.呼気NO検査
 呼気中の一酸化窒素を測定し、喘息の診断・重症度評価を行います。
13.神経伝導検査
 電気刺激を行い、神経筋活動を記録します。
細菌検査
細菌検査とは

 細菌検査室では、喀痰、尿、便、膿、血液などから、種々の感染症に関連している菌を発育させ、どのような菌に、どのような抗菌薬が効くのかを調べます。また、毎月の統計資料作成や、院内の環境培養検査を行い、院内感染対策に必要な情報の提供を行っています。

検査の流れ

提出された材料を染色し顕微鏡で観察します。熟練した技師は、
ある程度まで菌を推定することも可能な場合があります。

次に検体を目的菌に応じた培地に塗り、1~2日間フラン器で培養し菌を発育させます。菌によっては酸素を含まない培養や、CO2を多く使用した培養なども行っています。 発育した菌の中から、必要と思われる菌をさらに増殖させ、次段階である同定・感受性検査へと移ります。
この過程は自動機器により行いますが、1度の検査で発育してきた菌がどのような菌種なのか、またどのような抗菌薬が有効であるのかという検査を行うことが出来ます。

最後に、技師が同定された菌種などの確認を行い、臨床の先生方に報告して、
患者様の治療に役立てていただいています。

糖尿病診療支援

 糖尿病診療に関わるスタッフは、糖尿病療養指導士の認定資格を持っており、それぞれ看護師、管理栄養士、薬剤師、臨床検査技師、理学療法士と職種は色々ですが、専門分野の知識を生かし、チームとして患者様の診療支援や生活指導に取り組んでいます。 我々臨床検査技師は、自己血糖測定器(SMBG)の説明や導入、持続血糖測定器(CGM)検査、インスリンポンプ療法(CSII)の機器導入を行っています。また透析を回避するための腎機能評価(ΔeGFR)やCGMデータを解析し、血糖コントロールに役立てています。

CGM検査とは

 CGM検査は持続皮下グルコース測定という検査で、お腹や二の腕などの皮下組織に専用のセンサを留置し、連続的に皮下組織液中のグルコース濃度を記録する検査です。持続的にグルコース濃度を測定しているため、24時間通してのグルコース濃度の変動を確認することができます。組織液中のグルコース濃度は血糖値とよく相関しているため、血糖値の変動を確認するのに用いられています。
 この特徴により、適切で安全な糖尿病治療を行う指標となることが期待されています。
 普段の自己血糖測定(SMBG)では、点の箇所(その時の血糖値)しかわかりません。この検査では1日を通しての血糖の動きが線でわかります。
 そのため、自覚症状のない低血糖や食後の高血糖も詳しく確認することが可能です。

病理・細胞検査

 病理・細胞検査室では、内視鏡検査や手術で患者様の体より採取された組織や細胞から、病理標本を作成し「病理診断」を行っています。組織の切り出しや標本作成、切り出し図の作成など、まだまだ機械化されていない業務が多く、手間と時間のかかる部門です。
 病理診断は高度な技術や知識を備え、経験を積んだ専門の病理医が診断を行っています。
 細胞診断は細胞検査士が擦過、穿刺および吸引などで得られた剥離細胞の良悪性を判断をしています。

 病理解剖はご遺族の承諾のもと、患者様のご遺体を解剖させていただき、生前の診断や、病気の進行程度、治療の適否、そして死因は何かをいうことを調べます。